いつも旬な男の物語(170)〜俺は教師だ!「今、一番綴りたいこと㊹」〜
電車の揺れで微睡からふと目を覚ますと、左肩に軽い重みを感じた。
見ると彼女の頭が俺の肩にもたれかかり、気持ちよさそうに眠っていた。
身体がほぼ密着していたこともあり、彼女の体の温もりも感じ、俺は再び軽くまどろ
み始めた。
途中で私鉄から国鉄に乗り換えた。
車内は少し混んでいたのと、10分ぐらいで到着するので立ちながらお喋りをしていた。
降車駅に着くと二人でホームに降りた。
彼女はそこから今度はバスに乗ることになっていた。
バスが来るまでに少し時間があったので、二人で住所と電話番号を交換しあった。
川辺を肩を並べながら歩いた余韻と別れ難い感情に浸っているうちにも刻々とバスの
時刻が近づいてくる。
すると、彼女が「何か記念になるものを交換しない?」と言った。
「うん」と俺は頷いた。
彼女は神社のお守りを手にし、俺はネックレスを鞄から取り出した。
お守りは彼女の住んでいる有名な天満宮で買ったもの。
ネックレスは俺が高2の夏にホームルーム合宿で買ったもの。
前日の別れ際に「明日お互いに大切なものを交換しようよ」と彼女が微笑みながら提
案した。
「それ、いいな!」と俺も喜んで肯いた。
というわけで、その瞬間が今やってきたのだった。
俺は彼女の掌にネックレスを力強く置き、彼女はお守りを俺の掌にそっと置いた。
「ありがとう」と二人はほぼ同時に感謝の気持ちを伝えあった。
お守りを包み込む彼女の手の温もりが俺の掌に伝わるのを感じていた.....