いつも旬な男の物語(158)〜俺は教師だ!「今、一番綴りたいこと㉝」

 

  焼香をあげている時のことは覚えていないが、式の終わりにマイクロバスに乗って焼

  き場へと向かう彼女の顔は鮮明に心に残っている。

 

  参列者から見える側の窓際の席に座り、遠くの方を見ていた。

 

  その彼女の顔を見た時、深い悲しみが俺の胸に湧き起こり茫然とするばかりだった。

 

  バスが動き出すと俺はうっすらと目に涙を浮かべながら合掌した。

 

  「辛かっただろうなあ」

 

  「寂しいだろうなあ」

 

  「次に会った時、何て声をかけてあげようかなあ」

 

  「俺が彼女の立場だったら...」

 

  など、様々な思いが俺の中に去来した。

 

 

  夏休みが明けて登校してきた彼女の顔はいつもの爽やかな表情をしていた。

 

  歩くとき長い髪が風になびく様も以前と同じだった。

 

  俺はひとりホッとした...

 

  

  俺も自分の親父を看取った時、当時の彼女の心境に思いを馳せながら「彼女もこんな

  思いをしていたのかなあ」としんみり感じていた。

 

  担任の中林先生との思い出よりも、彼女との思い出が一番印象に残っている高2時代

  だった。