いつも旬な男の物語(165)〜俺は教師だ!「今、一番綴りたいこと㊴」

 

  午後の試験が終わると、彼女は俺の方を見た。

 

  俺も彼女の方に目を遣った。

 

  昼休みに一緒にご飯を食べたことで、二人の仲は昼食前とは明らかに変化していた。

 

  たった1時間のふれあいが二人の間を親密にしていた。

 

 

  彼女は遠く九州から受験のために出てきていた。

 

  俺は地元ではないが彼女に比べると遥かに近く、自宅から受験しに来ていた。

 

  二人に共通しているのは、自分以外に誰も知っている受験生がいないことだった。

 

  それが二人の間を縮める要因になっていた。

 

 

  偶然彼女と俺が近くにいて、自分たちの受験会場を探していたというのも要因の一つ

  だ。

  

  

  二人とも同じフランス語学科を受けることになっていたのも要因の一つだ。

 

 

  この三つが重なったことで、俺は彼女に幼馴染のような感情、仲のいい友だち、ひょ

  っとして以前から付き合っている恋人のような感情を抱いた。

 

  多分、彼女も同じような感情を持ったんじゃないかなと思う。

 

 

  まだ春先でもあり、夕方が近づく街中は薄暗かった。

 

  彼女は親戚の家に泊まっていた。

 

  偶然にも彼女の泊まり先と俺の自宅へは途中まで同じ電車に乗る必要があった。

 

   

  午後の試験内容のことや明日の試験のことなどについておしゃべりしながら最寄りの

  駅へと向かった。

 

  彼女の身体がふれあう近さで歩いているのが俺には信じられなかった。

 

  知り合ってまだ半日しか経っていないのに、偶然出会った女の子と体温が感じられる

  ぐらいの距離にいるなんて.....