いつも旬な男の物語(154)〜俺は教師だ!「今、一番綴りたいこと㉙」
俺も高校生になり、また一歩おとなに近づいた。
高1の担任は年配の女性だった。
家庭科の中林先生で、高2も同じ担任だった。
高校は中学と違って通学圏が広くなり、知らない名前の中学ばかりだった。
最初は名簿の順番に座り、言葉を交わすのは俺の前後の生徒だけだった。
次第にクラスにも慣れ、帰宅方向が同じ友だちもでき、学校生活が楽しくなった。
国鉄と私鉄を乗り継いで通学し、帰宅途中には乗り換え駅のモールでオーディオショ
ップや書店に友だちと毎日寄ったものだ。
確か5月だったか、ホームルーム合宿というのが1泊2日で行われた。
学校生活やクラスに早く溶け込めるように新1年生の春に毎年実施されていた。
担任の中林先生との思い出はあまり印象に残っていないが、秋の文化祭での出来事に
ついては強く記憶に残っている。
文化祭の取り組みで放課後に残って作業している時だった。
ひとりの女子生徒が教室の後ろにある備え付けの棚に乗って、掲示物を壁に取り付け
ていた。
何かの拍子に彼女が下に落ちて、顔に怪我をし救急搬送された。
後で先生から事情を聞いたら、東京の病院に行って顔面の手術をするということになっ
たらしく、しばらく学校を休むということだった。
女の子でもあり、後々顔に傷が残らないようにということで、当時の最新の治療を受
けることになった。
退院して登校してきた時には、手術の跡が全くわからなかった。
なんでも体の別の部位から皮膚を取ってきて移植するという手術だった。
その当時は登校してきた彼女の顔を見て、医術の進歩に驚いたものだ。
お陰様で彼女は以前と変わらず笑顔で明るく学校生活を楽しんでいた.....