いつも旬な男の物語(91)〜先生の言葉に救われた⑫〜

 

  先輩に相談に乗ってもらい半日もの間話をしたが、俺の気分はスッキリとはしなか

  った。

 

  しかし、そのお陰様で次の道筋だけは決まった。

 

 

  朝日を浴びながら電車のシートにもたれていたが、眠気は感じなかった。

 

  自宅に着いて顔を洗ったら、直ぐにまた電車に乗って学校に向かった。

 

 

  電車を降りて学校に向かう道すがら何人かの生徒に会い「おはよう」といつものよう

  に元気よく声をかけた。

 

  「もう、これも今日で終わりだな」と思うと気分が軽く感じた。

 

 

  しかし、正門をくぐるとまた少し気分が重くなった。

 

  そのまま職員室へ向かい、自分の机に鞄を置いた。

 

  先輩と交わした約束通り、直ぐに学年主任(富田先生)のところに行った。

 

 

  「おはようございます、富田先生。」少し緊張気味な俺。

 

  「おう、おはようさん」笑顔で富田先生。

 

  「ちょっと話があるんですが、今いいですか」少し暗い表情の俺。

 

  「おう、いいぞ」やはり笑顔で富田先生。

 

  「実は、教師を辞めようと思ってるんです」深刻そうな俺。

 

  「おっ?どうした」相変わらず柔らかい笑みの富田先生。

 

  そこからはどんな話をしたのかは詳しくは覚えていない。

 

 

  辞めようと思うに至った経緯を簡単に話したと思う。

 

  1時間目が全校集会で、その時刻が近づいてきたので富田先生は俺に「如月先生、今

  から声出してこい!教室を回って大きな声で生徒の追い出しをしてこい」と言った。

 

  俺は辞めるつもりで富田先生に相談したが、そのタイミングを逸した。

 

  生徒に向かい合わなければならないということに俺の気分はまたもや重く感じた.....