いつも旬な男の物語(90)〜先生の言葉に救われた⑪〜
先輩との楽しい夕食のひとときが終わりに近づくにつれ、俺は次第に気分が重くなっ
ていった。
俺の表情を察して先輩は「じゃあ、ちょっと僕の家で話の続きをしようか」と言った。
その言葉で俺はまたもや気分が変わった。
まるで、行き止まりに出くわした時、急に前に道が開けたみたいだった。
「これで、まだひとりにならずに済んだ」と俺は思った。
晴れ晴れとした感じで俺は先輩宅に向かった。
先輩の部屋でお酒を飲みながら、食堂での話の続きをした。
食堂で1時間ぐらい話をし、場所を先輩の家に移してからも延々と話をし、気がつく
と夜が明けていた。
俺が悩み始めた経緯から今の心境に至るまでを全て打ち明け、「もう教師をやめたい」
という思いになっているということをひたすら先輩に訴えていた。
俺の頭の中では教師を辞めて早く楽になりたいという思いでいっぱいだった。
話は何度も同じ内容を繰り返し、出口が見つからなかった。
まるで負の螺旋階段を降りるみたいにどんどん出口から遠ざかっていくようだった。
しかし、時間は容赦なく過ぎ外も明るくなってきた。
「辞めるのは保留にして、まずは学年主任の先生に相談してみることだな」と最後に
先輩が言った。
「はい、そうします。忙しいのに長時間おじゃまして申し訳ありませんでした。あり
がとうございました」と俺は先輩に言って辞した。
先輩に相談しても、俺の気持ちはスッキリとはしなかったが、少なくとも次の道筋だ
けは決まった.....