いつも旬な男の物語(88)〜先生の言葉に救われた⑨〜
現金なもので、次の目標が決まると俺はルンルン気分で先輩の住む所へと急いだ。
バスに乗り先輩の住所を頼りに近くまで行き、電話をかけた。
先輩の声が聞けた時は安堵の気分でホッとした。
彼は大学のゼミの先輩で、年は俺より10歳ほど上だった。
先輩と言っても、ゼミ生としての学年は同じだった。
そして、彼は夜間の部のゼミ生だった。
俺が大学5年生の時に初めてこのゼミを取り、その年の夏に歴代のゼミ生が集まっての
懇親会があった。
その時、初めて出会った彼の表情は何となく自信なさげで暗い感じだった。。
彼は既に英語の教師として他府県で働きながら、聴講生として俺と同じ先生のゼミを
夜間で受けていた。
かなり荒れた中学で、毎日生徒との格闘で身体によく痣をつくっていた。
ガタイはそんなに大きくないので、生徒になめられることが多かったらしい。
彼の表情にあまり生気が感じられない理由がわかった。
彼は「このままではずっとなめられっぱなしだ」と思った。
そこで「なめられっぱなしでたまるか!」と一念発起し、柔道を習い始めた。
最初に出会った時は習い出して間もなかったので、身体にはよく痣ができていた.....