いつも旬な男の物語(183)〜俺は教師だ!「今、一番綴りたいこと 57」〜

 

  「もう1年浪人させてください」俺は頭を下げておやじにお願いした。

 

  「う〜ん」おやじは考え込んだ。

 

  「これが最後です。もし、無理なら東京で住み込みの新聞配達をしながら受験する覚悟

  です。もう一度だけお願いします」

 

  おやじとおふくろは顔を見合わせたまま黙りこみ、少し間をおいておやじが言った。

 

  「もうこれが最後だ。これ以上のお金は出せん。その心づもりでやること」おやじは

  意を決して放った。

 

  「ありがとうございます」と俺は心の底より感謝の意を伝えた。

 

 

  俺は3浪の決断を下す前に、もし万が一おやじに断られたら東京に出て朝日奨学生とし

  て住み込みで新聞配達の仕事をしながら受験することを決めていた。

 

  そりゃそうだろなあ。高校卒業後まともに勉強もせず宅浪して受験に失敗し、予備校

  に通わせてもらっても、志望校に受からなかった。

 

  おやじにしてみれば、2浪目は実力に見合った大学にしておけばよかったのにという気

  持ちがあったと思う。

 

  また、滑り止めを受けておけばよかったんじゃないかという思いも。

 

 

  確かに滑り止めを受けていれば受かっていたかもしれない。

 

  しかし、俺の中ではどこでもいいという気持ちはなかった。

 

  何としても志望校に入りたかった.....