いつも旬な男の物語(172)〜俺は教師だ!「今、一番綴りたいこと㊻」〜

 

 

  掲示板には二人の名前は載っていなかった。

 

  勉強不足でもあり何となく厳しいかなと俺は思っていたが、目の前に自分の名前が無

  いのを見ると流石にガクッときた。

 

  せめて彼女のはという思いで見たが、彼女の名前も無かった。

 

  ひょっとして見落としたのかもと思いながら、再三確認したが結果は同じだった。

 

  ようやく事実を受け入れ、俺は駅へと向かった。

 

 

  ちょうどこの日は爽快な天気だったが、直ぐに電話する気分にもならず電車に乗り高

  校時代によく降りた駅へ向かった。

 

  ホームが広くいろんな在来線が通っている大きな駅で、そこのホームにあるキオスク

  の公衆電話から彼女に遠距離電話をした。

 

  10円玉ではほんの10秒ぐらいしか話せないので、100円玉を入れてダイアルした。

 

 

  結果を彼女に伝えると「やっぱりだめだったかぁ」と少しがっかりした。

 

  「二人ともまた来年だな」と俺は気を取り直して言った。

 

  「そうね、来年があるもんね」と彼女も明るく言った。

 

  「そうだよ」と俺も最初の衝撃から立ち直り元気よく言った。

 

  「私、予備校に通いながら来年また受ける」と彼女は力強く言った。

 

  「俺は予備校には行かずに宅浪で頑張るよ」と俺も力を込めて言った。

 

  「お互いに勉強がんばろうね!」と笑いながら彼女は言った。

 

  「うん、お互いがんばろう!」と俺も明るい口調で言った。

 

  「じゃあまた手紙書くわね」と彼女。

 

  「うん、俺も書くよ」と俺。

 

  「ありがとう」と彼女。

 

  「ありがとう」と俺。

 

  「じゃあね」とお互いに言いながら受話器を置いた。

 

 

  彼女と喋っている間、俺はひっきりなしに.....