いつも旬な男の物語(101)〜先生の言葉に救われた㉒〜

 

  終業式のチャイムが鳴り、生徒たちに書いてもらった感想文を持って職員室に戻る途中

  一人の中2女子生徒が俺に話しかけてきた。

 

  「せんせい、学校やめんの?」笑いながら女子。

 

  「えっ、いや辞めないよ」一瞬ドキッとし、少し自信なさげな表情で狼狽える俺。

 

  「やめないでね、せんせい」明るく女子。

 

  「ああ」気を取り直すも、ぎこちない笑顔で俺。

 

  いやはや、噂が広まるのは早い!

 

 

  それから職員室に戻ってからのことはほとんど覚えていない...。

 

 

  俺がここまで悩んでいたとは2年の学年の先生は誰も知らなかったので、誰もが驚い

  ていた。

 

  「職員室ではいつも偉そうな態度だったんで全然気づかなかった」と同僚の教師に言

  われるぐらいだから、俺の演技は大したものだったんだろう。

 

 

  俺は自分が悩みもがいているということを誰にも言わなかった。

 

  ゴールデンウィークにレジャーランドに行った帰り、ゼミの先輩に相談するまでは親

  しい仲間や同僚にさえ言わなかった。

 

  そんな俺が富田先生に相談し、副担任のクラスの英語の授業で放った。

 

  同僚・学年の先生・生徒たちの誰もが本当にびっくりしていた。

 

 

  生徒たちに書いてもらった感想文は家に帰ってじっくり腰を据えて読むことにした。

 

  生徒たちは俺のことをどう思っているのか、生の声がこの藁半紙にはいっぱい詰まっ

  ているんだと思うと、この日の授業も苦にはならなかった.....