いつも旬な男の物語(95)〜先生の言葉に救われた⑯〜

 

  朝、富田先生に相談をしてから時間的には30分も経っていなかったと思う。

 

  憂鬱な気分が清々しい気分になり「さあ、家に帰ってパチンコに行くぜ」と俺は心の

  中で呟いていた。

 

  「これで急場は凌げた。あとはまたその時考えればいいや」というその場凌ぎの安易

  な思考回路にハマったかのようだった。

 

 

  どこかに立ち寄ったか、家に直帰したかは覚えていないが、昼過ぎから夕方にかけて

  パチンコに行ったことは覚えている。

 

  自転車で15分のところにある大きな川沿いのパチンコ店だった。

 

  今はもう跡形もなく飲食店が立ち並んでいる。

 

 

  ちょうどその頃はまだ、羽根ものの台が流行っていた。

 

  巾着袋に100円硬貨を50枚入れて、この5,000円が無くなればパチンコを辞めること

  にしていた。

 

  その日は勝ったのか負けたのかは覚えていない。

 

  2〜3時間ではあったが、学校のことを忘れてひたすらパチンコの玉を追い、ギ

  ャンブルに集中できたお陰で、束の間の気分転換にはなった。

 

 

  パチンコを終えて帰宅し、夕食を終える頃からまたもや重い気分になっていった。

 

  ところが、前日までの重苦しい気分ではなかった。

 

  負の螺旋階段を降りていく感じではなかった。

 

  

  ほんの少しではあるが、今までとは逆に正の螺旋階段を登り始めたような気がした。

 

  その時の感触は今でも明瞭に覚えている。

 

  

  何かが俺の中で変わり出した。

 

  この瞬間から俺は教師を辞めようとは考えなくなった.....