いつも旬な男の物語(35)〜教師に憧れて㉟〜

 

  実習から6日目の土曜日、放課後の部活動に参加させてもらった。

 

  当時は土曜日は午前中授業だった。

 

 

  昼食を済ませた後、俺は部員たちといっしょに活動場所に出かけた。

 

  学校の近くを川が流れていて、その河川敷グラウンドが練習場所だった。

 

  俺が中学生の頃は学校の運動場で練習していたが、部活動の数が増えて運動場は曜日

  ごとに割り当てられていた。

 

 

  俺は中学時代野球部に所属していたので、実習期間は野球部の練習に加わらせてもら

  った。 

 

  ちょうど顧問も英語の先生で授業を見学させてもらったことがあり、授業と部活動で

  の教え方の違いも学べるいい機会だった。

 

 

  顧問の野間先生は40歳ぐらいで、大学まで野球をされていた。

 

  授業で見せる柔和な表情は部活動では厳しい顔になったいた。

 

 

  何かヘマをやらかした部員が野間先生にデコピンをされ、罰の悪そうな顔をしながら

  大粒の涙を流していたのを今でも鮮明に覚えている。

 

  ゲンコツにした手の中指の第二関節の部分でおでこをコンと叩くのが野間先生のやり方

  だった。

 

  悪さをした息子が親父に叱られている感じだった。

 

  そばで見ていた俺も「今度は気をつけろよ」とまるでその生徒が弟のように思えた。何

  となく家族という雰囲気を感じた。

 

 

  今ならひよっとして暴力と取られてしまうかもわからないが、それは生徒と教師の人

  間関係に左右されるのだろう。

 

 

  俺には当時の昭和の時代が懐かしい.....